日本人独特の建築
皆さんは数奇屋(すきや)という言葉を知っていますか。
これを見て、一体何を打っている店かと皆さんは考えるかもしれません。
ですが少々年配の方ならともかく、若い人にはこの数奇屋という言葉を知らない人が多いのではないでしょうか。
この数奇屋は何かの店ではなく、簡単に言えば茶室、或いは茶室風の建物です。
茶室とは言うまでなくお茶を楽しむための部屋、建物で、茶席、勝手、水屋等が一棟に備わった建物です。
数ある大工の種類に、数寄屋大工という大工もいます。
これはその名の如く茶室を造る大工のことです。
主に木造軸組工法という工法を使って茶室を建設するか、或いは茶室風を取り入れて家屋を造ります。
こうした建築工法を数寄屋造り、或いは書院造りとも言います。
この数奇屋大工が茶室やそれに類する家屋を建設するときには、他の家屋の建設とは大きな違いがあります。
それは実用一辺倒で建築をするのではなく、日本人独特の精神を体現するわび・さびや、或いは日本の美を代表する花鳥風月といった粋や趣を表現し、それを建築に活かすことです。
建築に当たっては実用一辺倒ではなく、そうした趣を盛り込んだ細工や材料を用います。
数奇屋大工が本領を発揮するのは、何も茶室を建設するときだけに止まりません。
趣味人や風流人、或いは資産家である商人達が、趣ある蔵やはなれ、母屋等を建設する際にも、数奇屋大工の技術が生かされました。
また料亭、旅館等の建築にも数奇屋大工が活躍し、その建築ノウハウや精神が活用されました。
茶室と聞いて皆さんも想像ができるかもしれませんが、数奇屋造りには実に美しく、且つ緻密な細工が多用されます。従って大工達の高い技術とそれに素養とが必要でした。
また茶室には欠かせない炉の作成を専門とする炉壇師という職人もいて、これは今では日本に数人しかいないと言われています。
数ある大工のうち、町大工の場合は顧客の多くが庶民、一般人であったため実用的な建築が求められ、寺社大工の場合神社、仏閣が建築が仕事であることから、そうした寺社の持つ様式美への素養とそれを作り出す技術とが求められていました。
それに対しこの数奇屋大工は予算的にも自由が利き、上の二種類の大工に比べて自らの芸術センスや想像力を存分に発揮することができたと言えます。
高品質建築パース 低価格、短納期、高品質建築パース制作。デザイナーが創る建築パースデザイン
船大工
ここではもう一つ船大工(ふなだいく)を紹介しましょう。
船大工とは文字通り木造の船を造る大工です。ここでの木造船には帆掛け舟や屋形船等が含まれます。
現在は純木造船はすっかり少なくなっており、その技術を伝える者もほとんどいないと言われています。
昔の日本には漁師町が数多くあり、そこでは当然船大工も欠かせない職業で、大きな影響を与えていました。
そこでは一般の家屋等の建築に関わる仕事を生業とする大工と、それにこの船大工を兼業する者も多く、社会的な役割も町大工に近かったとされています。
今ではすっかり見かけなくなった木造船ですが、1960年代前半くらいまでは、各地の商業港の近郊河川でだるま船と呼ばれる運搬船を改築し、水上生活をする者も少なくありませんでした。
従って当時は木造船もまだ身近な存在でした。